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音楽の話 その2 [楽しい音楽の話]

いまひとつ文章が練れていないが(何を今さらだが(笑))、いいたいことは先にあるので、ぐだぐだの状態で公開する。

音楽の変化、発展、進化には、音楽それ自身(楽曲、演奏家や作曲家、あるいはそれ以外の音楽に直接関わる事象、スタッフ)のそれ以外に、いくつかの外的な要因が考えられる。
思いついたものをリストアップしてみる。
  1. 科学・技術の発展
  2. メディアの変化
  3. 社会情勢の変化
  4. 国際情勢の変化
これらのうちには、内容がダブるものもあるが、すべての事象をすぱすぱと切り分けることはできないかと思うので、そのあたりはご容赦いただきたい。また、それらの点についてはその都度言及する。

各要因に関して私の思うところを書いてみる。

1.科学、技術の発展
これらの要因が音楽に与える影響として、一番直接的でわかりやすいのは楽器の製作技術である。鍵盤楽器の普及により「平均律」が一般化したことはご存知であろう。また、各管楽器が単なる筒から現在の複雑な形状になった結果、音域が広がり、同時に移調にある程度無理が利くようになった(←多分)。他の楽器も同様で、結果いわゆるクラシックのオーケストラが、音色的にも音量的にも豊かになった。作曲家のモチベーションも変化し多様な音楽を生み音楽の変化、発展、進化を促したことは否定できないだろう。楽器単独の話であれば「バロック音楽」や「クラシック音楽」あたりの時代の話である。
20世紀に入る前後では、それらとは別の科学技術、いわゆる電力エネルギーによって楽器や声の音量を増幅したり、音色を変化させたり、さらには音自体を作成することも可能になった。同じく電気を用いて音楽そのものを演奏者から、空間的にも時間的にも離れている聴き手に転送することもできるようになった。最後のことはメディアに関することなので次項で言及する。
楽器製作技術の変化は、音楽そのものの変化に内包される部分もあるかもしれないが、音楽以外の数学、物理学、工学などの進化、発展が楽器製作などを介して音楽そのものに影響を与えている事実は疑いはないだろう。
楽器や電気処理以外にも、科学やら技術やらが音楽に与えた影響は色々あるだろう。つまるところ音楽(他の芸術も)は単に何やらファンシーやリリカルな場で、作曲家の羽根ペンか何かでぽわ〜んとできるようなものではなく(そういうものもあるかもしれないが)、芸術からは一応一歩引いた、裏方さん、技術屋さんの存在、仕事も決して見過ごしてはならない状況下で産まれてくるものであるということをここでは言いたいのである(まあ当たり前のことだけど)
そういえば思い浮かぶエピソードとして、コンサート会場などにでーんと控えるパイプオルガン、音を鳴らすのに電力による送風になる前は、例えばバッハのような人が一人でオルガンを弾こうとすると、裏で何人もの人夫さんたちががポンプで風を送るための力仕事をしていたそうな。当時の労働環境の善し悪しはわからないが、彼らはまごうことなき素晴らしき音楽技術スタッフの一員であったことは確かであるということは言える。

2.メディアの変化
ここで述べる「メディア」とは、作曲家によって造られる、あるいは演奏者によって演奏される音楽を最終的に聴き手に届けるための様々な手段、という風に定義、解釈していただきたい。
例えば、バロック以前の音楽で現在流布されているような曲については、たいていが貴族が自分の豪邸に友人たちを招いて演奏会をするという、極めて限定的な「メディア」の状況が説明される。これにより貴族とそのお友だち以外の庶民の音楽が切り離されている可能性も否定できないが、言い方は悪いが、庶民でも演奏会の「おこぼれ」的なものに預かっている可能性はあるだろうし、貴族が領主でしかも演奏者であれば脅してでも(笑)領民にも聴かせようとすることもあるかもしれない。器用な庶民がいれば、貴族が教育を与え自分のお抱え演奏者にするということもあるだろう。そこは好意的かつ楽観的にとらえて、そんな感じの複合メディアで音楽が貴族のみならず普く当時の音楽が出回っていたのではないかと妄想してみる。もちろん庶民は庶民の音楽もあるが、それが貴族的な音楽と遠くかけ離れたものとは思えない。あ、教会経由とかもあるのかな?そして私の妄想では逆の流れの存在もあるのではないかとも思う。
そして、この時代のもう一つのメディアが、作曲家が発信する紙媒体であるいわゆる「楽譜」である。グーテンベルクの活版印刷により楽譜が初めて印刷されたのが1473年とされているようなので、遅くともバロックの時代には楽譜印刷とそれによる流通は普及していただろうと思う。楽譜を入手して、貴族さんたちが友人や庶民の皆さんに得意げに演奏してみれば、当時のヒットパレード、カウントダウンは成立するのである。歌詞付きのものをみんなで一緒に歌えば歌声喫茶(←例え古い)、あるいはカラオケボックス状態にすることも可能である。
この貴族たちのどちらかと言えば閉鎖的な音楽メディアは、私の妄想ではモーツァルトの時代ぐらいまでは普通だったのかな、と思っていた。だが、随分前に「アマデウス」という映画を観てちょっと驚いた。映画なので誇張もあると思うが、「魔笛」というオペラを場末っぽい会場にかけたら、客のそこらへん(ヨーロッパだが)にいそうな庶民のおばさんやおじさんにバカ受けする(ほんとぴーひゃらどんどん状態である)というシーンがある。後の、耳に障害のあるベートーベンが、観客の大拍手が聞こえなかったというエピソードを聞いていたので、そのあたりかと思っていたのだが、一般庶民を呼び込む「演奏会場」というメディアが一般化するのは(私の想像よりは)意外と早かったようである。(戯曲のシェークスピアなどはエリザベスIの時代=東インド会社=江戸初期=1600年=バロック音楽初期、なので、音楽はおいておいて、演劇の劇場の普及はそれ以前、かなり早かった、ということになるのかな。勉強不足だ。。。西洋音楽に取り込まれていない時代の江戸時代の芝居や、それ以前の能や狂言との違いをメディアの観点いから考察すると面白いかもしれないが、現時点でとても私の手に負えない)
それ以降、近代の放送技術や大量生産コンテンツ、録音媒体、ネットワークなどのメディアの変化の状況に関しては語るまでもないかと思うので省略する。
これら、「メディアの変化」によって、音楽の何が変わるのか。
例えば、豪邸とはいえ貴族の私邸とコンサートホールでは演奏者の人数や会場の規模が異なる。次の項目とも重なるが、メインとなる客層も変化する。つまり演奏者たちの編成やそれによる音量、音質、それに楽曲の嗜好の方向性などが大いに変化する可能性がある。バッハとか技巧的にはかっこいいけど、音の厚みとかはベートーベンの方がいいよなー、みたいなのはそういうことなんだろう(どっちがいいとか言っているわけではない)。
あるいはもっと卑近な例としては、メディアとしての記録媒体がアナログレコードからCDに変化した場合、音楽としての一番大きな変化は、私の考えるところ実際的には音質でもフィットする楽曲の作風でもない。もっと外見的な、音楽トータルの演奏時間、そしてランダムな選曲の可否である、と私は思う。貴族さんの家とかコンサートホールで演奏される音楽が主流だったときは、例えば管弦楽曲のような長い曲は、それぞれの会場において「どれくらいやったら受けて、どれぐらいやったら飽きられるだろうな〜」というような計算を働かせる必要がある。放送媒体の時代になったときのエアプレイする「ヒット曲」に関しても最適な演奏時間(放送で飽きられない時間)というものがあるだろう。「ヒット曲」については、もっと即物的にシングルレコードの収録時間にも影響する。収録時間のリミットがある記録媒体がディストリビュートされる状況になって、演奏時間はその収録時間に縛られるようになった。一方でCDの収録時間はベートーベンの「第九」の演奏時間で決められた、などというコールバックな話もあるから面白い。
レコードの時代は、アルバムは裏表4、50分聴けば音楽は終わる。ビートルズの初期みたいに30分程度で終わるCP感の悪い(笑)物もある。だが、最近のCDアルバムは長い(筆者感)。レコードの時代と比較してものすごく長い(筆者感)。まだあるのかよ、というぐらいに長い(筆者感)。てめーいい加減にしろ!というほど長い(筆者感)。今では90分とか当たり前である。だが大丈夫だ。レコードだろうがCDだろうがMDだろうがHDDだろうが、音楽のコンテナが記録媒体になった時点で、聴くことを途中で他人に気遣わず自分の意志でやめることもできる。まあ別に記録媒体に限らず、放送だったらスイッチ切れば良いし、コンサートだったら途中で帰れば良い。ただしそれらの場合はいずれもやり直しがきかないという短所がある(有線だったら再リクエストできるけど)。また、会場が貴族さんちだったら途中で帰ったりしたら後々気まずくなりそうだが。
逆にいつまでも聴きたければ、デジタルの場合はループさせれば良いし、ジュークボックスのようなメディアをいくつもいれられるようなプレイヤーはあまり普及していないとは思うが、パソコンでiTunesとかに取り込んでしまえばいつまでだって聴いていることができる。これらは音楽の視聴環境の変化ではあるが、このような視聴環境の自由化が、音楽の形式が以前と比較してかなり自由になった、結果として前世紀、今世紀と音楽そのものが変化した要因の一つではないかと思っている。長々と今さら語るまでもなく、ここで定義する「メディア」が音楽に影響する重要性について、ご理解いただけているのではないかと思う。


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